MSC Nastran 振動・構造解析ソフトウェア
有限要素法(FEM)を用いた MSC Nastranは世界で圧倒的シェアの汎用構造解析ソフトウェアです。1971年のリリースから、航空宇宙、自動車、造船、機械、建築、土木などの様々な分野における構造解析・強度解析・剛性解析・振動解析・非線形解析・最適化解析・疲労解析などの幅広い領域の解析に利用されています。
世界初の商用有限要素プログラム
構造解析シミュレーションの業界標準である MSC Nastranは、50年以上のアプリケーション実績を有しています。
1. 構造解析とは
高層ビル、自動車、ブラケット、ロケット、飛行機、ドローンなどの構造物を作る際には、多くの設計要件を満たす必要があります。設計要件を満たすためには、設計者が長年にわたり積み重ねてきた経験や勘、実際の試作を通じて、"構造物が耐えられるか"を検討します。熟練者の経験や勘が、物理原理に基づき、誰もが理解でき、検証結果をデータとして活用できるのが構造解析です。
たとえば、コンピューター上で「ある部分を止めて、別の部分に荷重や変位」を与えます。すると画面上では構造物が変形し、実物では見られない応力やひずみを可視化できます。設計中 (もしくは設計前) の形状が適切か過剰設計か、さらなる軽量化が可能かを検討できます。
2. MSC Nastranの特徴
MSC Nastranは、線形 / 非線形領域における静解析・動解析・熱伝導解析に使用され、高度な構造解析の問題解決のための信頼性の高いアプリケーションとして広く採用されています。その活用範囲は多岐にわたり、航空宇宙、自動車、造船、機械、電機電子、建築、土木などの幅広い業界の研究機関や企業で基盤研究から先端研究に至るまで使われています。
MSC Nastranは、長年の実製品への適用で培われた技術の蓄積により、幅広い産業で標準プログラムとして採用され、世界的なデファクトスタンダードとして高い評価を受けています。精度の高い要素技術、自動部分構造合成法による高速化、組込型疲労解析を搭載し、ハイパフォーマンスコンピューティングの適用により問題を解決します。
MSC Nastranの誕生:
- 1964年 NASA の構造解析プロジェクトが開発開始
- 1970年 NASTRAN(NASA Structural Analysis system)完成
- 1971年 MSC Nastran として販売開始:初の商用有限要素プログラム
- 以後、解析機能、要素技術、パフォーマンスを向上させつつ、バージョンアップ
エンジニアは構造システムに必要な強度、剛性、寿命を確保し、構造機能や安全性を損なう可能性のある故障(過剰な応力、共振、座屈、異常な変形)を回避するために MSC Nastranを使用しています。MSC Nastranは、構造設計における経済性と快適性を向上させるためにも使用されています。
また、メーカーはMSC Nastran の複合領域にわたる独自のアプローチを活用して、製品開発プロセスの様々な解析において構造解析を行っています。
-
設計プロセスの早い段階で試作品を仮想的に製作し、従来の物理試作品製作に伴うコストを削減できます。
-
製品使用中に発生する可能性のある構造上の問題を確認し、開発時間とコストを削減します。
-
既存設計の性能を最適化し、独自の製品の差別化要因を検討し、競合他社に対する優位性を得ることができます。
MSC Nastranは、有限要素法を使用し、高度な要素技術と数値解析手法に基づいて設計されています。非線形の問題では、3次元接触や多様な材料モデルを採用しています。多数の最適化アルゴリズムが用意され、疲労解析機能は、高速でロバストな疲労解析ソリューションである CAEfatigueをを組み込んだ解析技術を採用しています。
3. 構造解析における一般的な悩み
構造解析シミュレーションを実施する上で、皆さんが抱える悩みが、「知識と経験が豊富な解析専任者しか扱えない」や、「解析の精度に対する懸念」などが挙げられます。これらの課題をHexagonは解決することが可能です。
解析結果の妥当性:
構造解析シミュレーションを実施する際に、解析結果が正確なのかを不安視する方も多いです。そういった課題は、最高精度のシミュレーションをお客様に提供をしているMSC Nastranで解決することができます。V&Vで裏付けられた要素精度、高速かつ正確なシミュレーション結果を提供しています。先進的なソルバーは、継続的に改良された並列処理機能、スマートなアルゴリズム、便利なツールにより、お客様のコンピュータリソースを効率的に活用します。
専任者以外が使用するには:
構造解析シミュレーションを一部の解析専任者だけが利用するというのは、よくある課題です。専任者以外でも使いやすく解析が実行できるように、Hexagonでは MSC Apex をお勧めしています。誰もが使いやすく、操作が簡単な点が、MSC Apexの大きな特徴です。形状を画面上で直感的に修正でき、解析実行後でも形状修正が簡単にできます。設計変更を繰り返す場合はその効果はより大きくなり、解析実行→解析結果確認→形状修正→結果確認 の手順がスムーズになります。
4. MSC Nastranの強み
CADに搭載された構造解析やフリーのソフトウェアと違い、MSC Nastranは世界中の数々の認証機関を通過しています。信頼性はもちろん、解析スピードも速く、設計を効率化してくれます。コンピューター黎明期だったNASAのロケット開発時から、大規模な振動問題を高速に計算する技術に重点を置いており、MSC Nastranは開発され、開発の歴史は世界の自動車産業や航空宇宙産業の技術開発の歴史そのものであり、各業界のコンソーシアムから得られたアイデアがMSC Nastranに取り込まれてきました。
MSC Nastranは有限要素法(FEM)ソフトウェアであり、高度な構造解析や精密な解析を行うための強力なツールです。また、豊富な複合領域解析機能を備えており、複数の異なる解析モデルが必要だった強度解析、振動解析、非線形解析、衝撃解析、破壊解析、熱解析、疲労解析、熱・構造連成解析などのさまざまな領域の解析を、単一の共通モデルとして実行できます。
複合領域の構造解析
一般的な構造解析ソリューションは、1 つないし2つの解析分野に特化しています。包括的な解析能力を習得するには、複数のソフトウェアで複数のソリューションを取得し、新しいツールごとにトレーニングを受ける必要があります。MSC Nastranは、複数の解析機能を備えており、ユーザーは、1 つの構造解析ソフトウェアで幅広いエンジニアリング問題に対応できます。
- たった1つのプラットフォームで、線形または非線形問題に対する静解析、動解析(NVHと音響)、熱解析、座屈解析の実行が可能
- 組込型疲労解析にて、他の疲労寿命予測よりも計算時間を短縮
- Digimatの平均場均質法によるユーザー定義サービスと進展型損傷解析により、高度な複合材と繊維強化プラスチックの挙動を評価
構造アセンブリモデリング
構造システムは多くのコンポーネントで構成されており、構造部材が単独で解析されるだけではなく、構造全体を組み上げて解析する必要があります。MSC Nastranは、システムレベルの構造解析のために複数のコンポーネントを結合する多くの方法を備えています。
- 接着接触によるメッシュ結合処理の簡素化により、従来機能では時間のかかる異なるメッシュ領域の結合を可能にします
-
特殊なコネクタ要素による溶接やファスナーで構成されたアセンブリ時間を短縮します
- 「Module」機能を使用して構造の複数のコンポーネントを結合および管理し、追加の接続要素を使用したり、ID番号付け管理を心配なしに、完全なアセンブリモデルを構築できます
- スーパーエレメントを利用して大型アセンブリの再解析(再利用)を加速し、機密情報を隠しながら他のメーカーと構造特性を共有する可能です
- 接触解析で複数コンポーネント設計における接触応力と接触箇所を検討
-
自動接触生成機能を使用して接触ボディを自動的に作成し、接触ボディ間の接触関係を定義し、生産性を向上させます
ハイパフォーマンスコンピューティング
近年、解析モデル規模が大きくなる傾向があり、計算時間が増大しています。従来の FEMアプリケーションでは、大規模モデルの計算には数時間または数日かかる場合がありました。MSC Nastranは、大規模解析モデルを迅速に解決できる高性能計算機能を備えています。
- 並列化技術によるマルチコアおよびマルチノードクラスターのメリットを活用:共有メモリ型並列計算および分散メモリ型並列計算
- 自動ソルバー選択機能を使用して、シミュレーション時間を短縮し、大規模モデルのパフォーマンスを向上。MSC Nastranは、解析仕様(解析タイプ、要素タイプ、利用可能なメモリなど)に基づいて、最適なソルバーと最も効率的な並列数を自動的に選択します
- NVIDIA GPUカードを活用して、ソリッド要素で構成される大規模なモデルの解析を加速
- 固有振動解析では、 Lanczos ソルバーまたはAutomated Component Modal Synthesis (自動部分モード合成法:ACMS)を使用して、モード計算を迅速に実行
MSC Nastranを活用した振動解析
自動車を設計する上で、作成前に望ましくない振動や騒音の発生源の理解は有益です。Hexagonは、このニーズに対応するため、周波数応答関数(FRF)ベースの伝達経路解析(TPA)手法を提供しています。FRFは、与えられた周波数での単位荷重による、構成要素の周波数応答です。構成要素のFRFは、構成要素のアセンブリFRFを得るために組み合わせができます。TPAを通じ、ユーザーは発生源からターゲットへのエネルギーの流れを辿れ、クリティカルパスと騒音源の識別が可能になります。例えば、左上の画像では騒音源はエンジンであり、下の画像では騒音源はタイヤ荷重によるものです。これにより、車両NVHを理解し向上するためには、フルシステム解析を実行する必要があり、MSC Nastranは高速計算可能な固有のソルバーによって可能にします。
5. 誰でも使えるMSC Apexとは
高度な解析を実施するためには、解析専任者の専門的知識が必要になります。幅広い分野で、複雑かつ精密な構造解析を可能にするMSC Nastranには、設計者や解析初心者でも簡単に操作でき、かつ高精度な解析設定が可能なツールとして、MSC Apexをモデリングツールとしてお勧めします。MSC Apexは、直感的なユーザーインターフェースを提供する次世代のCAEソリューションです。モデリングから解析までのワークフローをシームレスに統合し、直感的なモデリング、メッシュ生成、解析のプロセスが含まれており、初心者にも取り組みやすく、使いやすさと効率性を重視しています。アセンブリだけでなくパーツ単品でも、CAD形状がある場合はCADデータをMSC Apexに読み込むことができます。読み込んだCADデータを基に、構造解析(応力評価や振動評価など)を行い、最大応力値や変形が設計条件を満たしているかを確認することが可能です。そして、もし設計範囲に収まらない応力や変形が発生している場合は、その場で形状を修正し、応力や変位の低下を検討できます。
6. MSC Nastranの解析事例
自動車や航空機などをはじめ、強度評価や耐久性評価には高いソルバー解析精度が必要です。MSC Nastranは1971年の商用化以来、世界中の様々な工業製品の開発設計で活用され、機能拡張を続けてきました。MSC Nastranで得られた剛性・振動情報の互換性はOEM-サプライヤーを超えて連携でき、共通のバーチャルモデルとしてご活用可能です。さらに振動解析等から得られる情報を音響解析、疲労解析につなげられます。
7. Hexagonの安心のサポートケア
豊富な使用実績を持つサポートメンバーが、お客様からのご質問(メール、電話、Web経由)に対応し、課題解決のお手伝いをいたします。これまでにいただいた様々なご質問や例題はQ&A形式でデータベース化してSimcompanionにてWebで公開しているため、お客様のご都合に合わせて、必要な時にこれらの情報にアクセスできます。また、お客様固有の課題については、ソフトウェアの使用方法だけではなく、モデル化・結果合わせ込み・自動化・ソフトウェア運用といった、弊社ノウハウを活かしたものづくりの活用方法に関する相談もコンサルティングサービスとして受け付けております。
「MSCアプリケーション エンジニアは、少なくとも月に 1 回は来社して当社の状況をチェックし、問題発生時には、サポートを提供してくれます。事実、この航空機は、MSCサポートチームによる電話サポート、現地訪問、コンサルティングサービスなしではモデル化が不可能でした」
AeroVironment、Dana Taylor
8. トークン制システム「MSCOne」について
Hexagonはお客様の様々なニーズに応えられるよう、トークン制ライセンスシステムを展開しています。例えば、開発設計の様々なフェーズで複数の種類の解析を行いたいが、全てのソフトウェアを購入することが難しい場合や、年に数回しか構造解析を実施する予定がなく、買い取りライセンスまでは踏み切れないといったお客様には、トークン制ライセンスシステムの「MSCOne」をご提案しております。MSCOneのトークンご購入いただくと、ご契約トークン数の範囲で様々なソフトウェアを柔軟にご利用いただけます。例えば、MSC Nastran(構造解析)から、音響解析(Actran)や流体解析(scFlow)を実施されたい場合、3種類のソフトウェアを個別で購入するのではなく、トークンをご契約していただき、用途に合った解析を実施することができます。もちろん MSC Apexも、MSCOneのラインナップに含まれています。
9. MSC Nastranの機能一覧
- 線形静解析
- 微小変形
- 線形接触
- 慣性リリーフ
- 線形動解析
- 実固有値解析
- 周波数応答解析
- 過渡応答解析
- 複素固有値解析
- ランダム応答解析
- 応答スペクトル解析
- 構造-音響連成解析
- 内部音響解析
- 外部音響解析(放射音)
- 吸音材モデリング機能
- 座屈解析
- 線形座屈
- 非線形座屈
- 伝熱解析
- 熱伝導
- 熱伝達
- 輻射
- 定常、非定常
- 陰解法非線形解析
- 高度な静的・動的非線形解析
- 大変形
- 材料非線形
- 接触
- 定常・非定常熱解析
- 伝熱-構造連成解析
- 疲労寿命解析
- 時間領域
- 周波数領域
- スポット・シーム溶接
- ローターダイナミクス
- 回転体のジャイロ効果
- 危険速度
- 空力弾性解析
- フラッター
- ダイバージェンス
- 最適化解析
- 寸法最適化
- 形状最適化
- 位相最適化(トポロジー最適化)
- マルチモデル最適化
- スーパーエレメント
- 高速計算機能(HPC)
- 直接法・反復法ソルバー
- 並列計算(SMP, DMP )
- ACMS(自動部分モード合成法)
- GPGPU
- カスタマイズ機能
- DMAP
- ユーザーサブルーチン
- 他のソフトウェアとの連携 HexagonのCAEソフトウェア一覧はこちら