IWESにおけるタービン動翼試験

AICON社の測定技術による革新的なライフサイクルモニタリング

2009年に創設されたドイツのブレマーハーフェンにあるFraunhofer Institute for Wind Energy and Energy System Technology (IWES)は、再生可能エネルギーに関する研究プロジェクトを専門とします。2011年以来、IWESは、AICON社の光学測定装置MoveInspect HFの利点を享受してきました。同測定装置は、長い試験期間でも、結果をリアルタイムに監視でき、一般的に利用されているプルケーブル電位差計と比較して、大幅な利点を提供します。 


「タービン翼の改善」-革新的試験方法のプロジェクト

特に、風力発電所のタービン動翼の場合、耐久性に関する信頼できる予測(動翼はいつ疲労するか、資材の欠陥はいつ可視化されるか)は、必要不可欠です。材質疲労に関する翼の挙動すなわち構造的欠陥の兆候と拡大は、システムが運用に投入されないうちに評価しなければなりません。動翼の認定試験手順を改善するため、アルノ・ファン・ビンゲルデ博士(Dr. Arno van Wingerde)の責任下にあるIWESの動翼センターは、「タービン翼の改善」プロジェクトを設立しました。 

IWES_Vorbereitung 動翼試験のプロジェクトマネージャのファルコ・ビュルクナー(Falko Bürkner)氏は、「タービン翼の改善」プロジェクトを以下のように要約しています。「現在まで使用されている測定方法は、最新世代の風力発電所には、最早十分ではありません。要求される精度を最適化するため、私どもは、過程全体を分析し、決定的な弱点としてプルケーブル電位差計を突き止めました。あるケーブル長を超えると、装置の応答時間が大きくなり、要求された精度で高度な動的荷重変化を監視することが不可能になります。この構成を、装置自体とサンプル間のいかなる結合でも、それを劣化させない光学3次元測定装置で置き換えるのは不可避だと思います」 

光学装置MoveInspect HFが、この目的に適用できるか慎重に検査され、翼の現在の変位量に左右されずに、リアルタイムで高精度結果を出せることが証明されました。 


3次元測定装置に対する要件

ただし、MoveInspect HFは、さらなる要件に適合する必要がありました。アルノ・ファン・ビンゲルデ博士のチームは、精度だけでなく、試験関連状況関する要件カタログも収集しました。 

1.静荷重試験

IWES_Messung 原則的に、仕様書は、1回の単体試験ではなく、一連の個々の静的試験を記述します。手順にかける前に、タービン翼は、補強コンクリートブロックにボルト固定されます。荷重は、油圧シリンダ、ロープ、および偏向ローラを使用して、垂直下向き動作の形で誘発されます。変形は、荷重を複数の明確な位置で短時間停止させ、1~20 mの範囲で発生することが予想されます。測定装置の課題は、空間での現在位置を追跡し、3次元座標をCANバス経由で中央データ処理装置に転送することです。要求されている精度以外に重要な点は、長期間の同時監視の対象点が多数でなければならないことです。 

2.繰返し荷重試験 

その寿命の間に、動翼は、さまざまな振幅で100万倍の荷重変化にさらされます。しかし、試験目的に鑑みて、衝突方向または回転方向で、翼をその自然周波数で刺激して一定振幅が印加されます。両方向に同時刺激をかけて、2軸試験も実施されます。いずれの場合も、荷重は、翼の中央範囲にある単体油圧シリンダを用いて伝達されます。 
値は、同期して検出され、リアルタイムに中央データ処理ユニットで転送されなければなりません。 

3.全般的要件 

  • 検出可能変形:最大20 m
  • データ周波数:100 Hz超、リアルタイム測定可能
  • 精度:2 mm未満、対象物のサイズに依存
  • 記録期間:制限なし
  • 装置構成:移動式システム
  IWES_MoveInspect-HF

MoveInspect HFは全要件を満足する

MoveInspect HFに対する検査は、AICON社にとって圧倒的な成功に終わりました。特定のアプリケーションに適合し、IWESチームを納得させたばかりか、達成された効率および記録密度も十分でした。AICON社は、光栄にも、2011年の初頭に相当する注文を受けました。 

ファルコ・ビュルクナー氏は、同装置の利点を以下のように明確にしています。「私どもは、MoveInspect HFのもたらしたコスト節約に驚いています。私どもの以前の測定装置(プルケーブル電位差計)と比較すると、新しい試験ごとに必要な設置時間が30分減少しました。毎回、多数の従業員が必要となりますが、この減少により、要員コストがすでに大幅に削減されています。さらに、取得した変位量の変換が必要なくなりました。私どもの新しいMoveInspect HFは、直交座標系に直接結果を渡すので、解析速度が大幅に上昇しています」 

また、データ密度に関しても、MoveInspect HFは、あらゆる予想を越えています。ファルコ・ビュルクナー氏は、以下のように確認しています。「AICON装置の検出したデータの中には、今まで、利用できなかったものあります。伝統的なプルケーブル電位差計では一部のパラメータを評価できません。たとえば、主に垂直荷重下で実施された試験における翼の左右方向の傾斜がそうです。この事実により、サンプルの品質に対するさらに詳細な解析が可能なことが分かりました」

IWES_Messadapter


IWESアプリケーションでのMoveInspect HFの構成 

MoveInspect HF装置は、試験対象物に方向付けされたデジタルカメラと連動します。最大90 mの動翼寸法により、4台のカメラが必要になり三脚に装着され、動翼の周囲に配置されます。この方法により、サンプル全体のどのような変位量でも、検出が可能になります。 

監視対象の試験点には、自動接着性測標により標識付けがされます。動翼の場合、最重要な点は先端です。最大可動域が、そこに存在するからです。たとえば、先端の可動域± 10 m、周波数0.5 Hzの動翼の場合、先端位置の結果速度は、最大32 m/sになります。 

2011年以来、AICON社のMoveInspect HFは、IWESに順調に設置され、多数のさまざまな動翼に対するライフサイクル分析に関する重要な情報の評価に使用されています。