朝日インテック マーカーを癌近傍まで運ぶデリバリーデバイスの開発に 「Marc」を活用し開発効率を大幅に向上
朝日インテックは、傷口が小さく痛みが少ない「低侵襲治療」の製品を開発・製造・販売しており、患者の QOL(Quality of Life)の向上、早期退院の実現などによる医療費の抑制に貢献しています。研究開発型企業として、顧客からの高度なニーズに応える過程で生み出された独自の技術により、ガイドワイヤーをはじめとするカテーテル治療に不可欠な医療機器を主力とした製品の開発・製造・販売を行い、国内のみならず、世界でも高いシェアを有しています。
同社は、中期経営計画の中で掲げた基本方針のうち「グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大」、「グローバルニッチ市場における新規事業の創出」に基づいた新規製品の開発過程で、未踏領域における機能・構造を創造・確立する必要性が高まると共に、開発の初期段階において、設計の方向性を 正しく定め、 よりアジャイルな開発プロセスを実現させることで新たな価値を市場に早期投入することを目的として、昨年 「MSCOne」を導入しました。
昨今、CTスキャンの技術が発達すると共に、システムのコストダウンにより市場への導入が進み、 癌が極微小な段階で発見されやすくなっています。 しかし、特に肺等、臓器によっては CT スキャン上で見つかっても、実際の手術時に、微小癌の位置を正確に特定することが困難な場合があります。そこで、手術時に術者をナビゲートするために、癌近傍にマーカーを留置することで、 摘出するべき部位の 精度を高め、 その大きさを最小限にすることで、術後の患者のQOLを高める デバイスの開発が進められています。
マーカーには、繋止フィンと呼ばれるコイル状のワイヤが取りつけられています。マーカーは、繋止フィンを専用のシリンダ内に収納した状態でデリバリーデバイスと呼ばれる装置によって癌近傍まで運ばれ、目的地で射出されます。この時、繋止フィンが本来のコイル状の形状に展開され、周りの臓器に張り付くことでマーカーが留置されます。
繋止フィンの展開は非常に速く、通常は肉眼で確認することが困難で、また収納状態によって展開の初期値が異なるために開き方が様々となり、設計意図の検証が難しくなります。
朝日インテックでは、デリバリーデバイスの開発に「Marc」による数値解析を用いることで、大変形領域におけるスプリングコイルの収納・展開の様子の可視化を実現しました。これにより レイアウトの違いによる繋止フィン展開の振舞いの検証が可能となり、開発効率を大幅に向上させることができるようになりました。
導入にあたり同社では、多くのベンダーに依頼したサンプル解析ならびにフィードバックをもとに選定を行い、解析コンサルティング能力と、幅広い複合領域の解析ソフトウェアを利用できるMSCOneの自由度の高さに魅力を感じて、エムエスシーソフトウェアを採用しました。
朝日インテック株式会社 主任研究員の相場 洋之氏は次のように述べています。
「高度な解析を用いることで、創造した新たな構造が持つ機能の確認を、試作・実験という従来のステップを踏む前に、アイデアの段階で高い確度で行うことができるため、その結果から起きるアイデアの連鎖の促進や、設計に移行する段階で製造上のリスクを知るコンカレントな活動への繋がり易さが、開発プロセスの効率や品質を向上させます。そのように実現された高効率な開発は、より新鮮なアイデアの創出や、市場への価値投入の早期実現を促進し、当社製品の先進性をより高めることに繋がる、と考えています。現在、新たな解析の取り組みとして、「scFLOW」による流体解析のテーマを進めています。設計の早い段階で、より性能の高い構造を探索可能となり、開発の効率化に大きな効果を発揮しています。今後は「MSC CoSim」による流体構造連成解析など、MSCOneをより効果的に活用するとともに、他の製品への応用も積極的に推進していきたいと思います」
*記載されている会社名および製品名は各社の商標または登録商標です。